yusucasting

ORDO Records 代表 & Dhingana Radio Station 放送作家 yusucaster のブログ

「冷たい熱帯魚」DMB#30

Dhingana Mail バックナンバーシリーズ (DMB)

2013.5.12  Dhingana Mail #23

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「事件」

この単語が纏っている色は

グレーだったり、ブルーだったり、ブラックだったりする。

 

ニュースや法廷では、そこの時間と場所に起きたことを文字化し、

言語にならない他の色を削ぎ落として、事実として情報化する。

 

そかから生じる感情は、哀しみ憎しみ憐れみなどが多くを占める。

 

しかし、人間が起こす行動である以上、

そこに伴うのがそれだけの形容詞のはずがない。

 

多くの映画は、

ある一つの世界色を決め込んでその色をベースに作品を塗っていく。

 

例えば黒をベースにした映画では、

オレンジのようなシーンもどこか闇を帯びた感じを持つ。

 

規則性のない色で作られた事実とは異なる現実を、ある一定の規則を持って再構築する。

 

これがあるからこそ、映画は作品として成り立つ。

そんなことを思ってた。

 

園子温にそれを全て裏切られた。

 

ーーーーー冷たい熱帯魚ーー

 

1993年に埼玉で起きた、愛犬家連続殺人事件。

ペットショップを経営する夫婦が詐欺的な商売を繰り返し、

トラブルになりそうな客を殺して死体を燃やして完全犯罪にしてしまうという事件。

 

この事件をベースに、2010年園子温は「冷たい熱帯魚」という映画を創った。

 

初めての体験をした。

 

人間の死体を大きな包丁で粉々にするシーンが 「明るい」

そのシーン全体を覆う色は完全なるオレンジ。コミカルな雰囲気がある。

 

事件をベースに描く映画で、明らかに異様な色。

 

 

しかし、その前と後ろにあるのは大きな憎しみだったり、不甲斐なさだったり。

そしてまた笑いがきたり。。

 

統一性の全くない色が並べられている。

「クえスちョんまーク」の嵐。

 

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ある種意識の中で現実を捉えようとすると、

どうしても世界に少しの規則を与えてしまう。

 

それを意図的に規則を排除するという形で、並び替えた事象。

つまり、人間の意識の外で動いている事象を、意識的に捉えてみせている。

 

それなので世界観自体がダイナミズムをもち、そこに入り込んでしまう。

 

自分が園子温作品を見るのはまだ2作目で、前は「愛のむき出し」しかみていない。

 

2つの作品で感じたのは、「主観を感じることが出来ない」ということ。

そして、園子温の映画では深いメッセージは感じない。

何故ならそれは意識の外で起こっている現実、自然を描いているからだ。

ある種の「超現実」

 

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そして不思議なことに、

例えばこの文章内に

 

(*゜ロ゜)ハッ!! トシテ (o^-')bグッ!!

 

のような顔文字が入ってきたらかなりの違和感がある。

しかし、その違和感が、

 

作品をみる妨げにならず面白く感じることが出来る理由は、

圧倒的に人の心を惹き付けるシナリオと、俳優の演技力。

これがその色を繋ぐ要因。

 

まだ2つの作品しか見ていないので園子温作品全てを定義することはできないが、

「シナリオと俳優の演技圧倒的なスキルで完璧なレベルまで引き上げ、

 超現実としての映画を創る。」

これが園子温なのではないかと感じた。

 

 

です。

(あのですね、かっこつけて文章書くと「です、ます調」じゃなくなってしまうんですが、書いた後に鏡で自分の顔を見ると、 ふざけんなかっこつけんな!、お前は生まれながら「です、ます調」の人生だ!と誰かに言われてるような気がするので、最後に「です。」を付けておきます。)

 

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